本来、児童生徒等を守り育てる立場にある教員が、児童生徒等に対して性暴力等を行うということは、断じてあってはなりません。文部科学省では、この問題について、厳正かつ実効性のある対応を検討・実行してきています。
第204回国会において、議員立法として「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(令和3年法律第57号。以下「法」という。)が衆参両院の全会一致により成立し、令和3年6月4日に公布されました。
この法律は、児童生徒等の尊厳を保持するため、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する施策を推進し、もって児童生徒等の権利利益の擁護に資することを目的としており、令和4年4月1日から施行されています(令和5年7月13日一部改正)。
また、文部科学省においては、法に定められた施策を総合的かつ効果的に推進するため、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針(令和4年3月18日文部科学大臣決定、令和5年7月13日改訂)の策定や関係省令の整備を行いました。
法においては、「児童生徒性暴力等」などの定義、児童生徒性暴力等の禁止、基本理念(学校の内外を問わず教育職員等による児童生徒性暴力等の根絶等)のほか、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止(教育職員・児童生徒に対する啓発等)、教育職員等による児童生徒性暴力等の早期発見・対処(調査・通報等)、教員採用権者による特定免許状失効者等データベースの活用義務、児童生徒性暴力等を行ったことにより免許状が失効又は取上げになった特定免許状失効者等に対する免許状授与の特例(再授与審査)等について規定されています。
本法では、過去に児童生徒性暴力等を行った者が再び教壇に立つことを防ぐための仕組みの一つとして、特定免許状失効者等(児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状が失効等した者)の免許状失効等に関する情報に係るデータベースを国で整備し、学校の教育職員等を任命又は雇用する際に、当該データベースを活用することが義務付けられました。これに基づき、文部科学省ではデータベースシステムを構築し、令和5年4月1日から稼働しています。
特定免許状失効者等に係るデータベースの活用及び記録に関しては、
等が求められます。
区分 | 内容 |
---|---|
対象施設 | 幼稚園(幼稚園型認定こども園含む)、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校 |
対象となる職 | 教育職員(教諭等)、校(園)長、副校(園)長、教頭、実習助手、寄宿舎指導員 |
データベースに表示される情報 | 児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状が失効又は取上げとなった者の以下の情報 ※ 氏名、生年月日、免許状の情報、失効・取上げ年月日、失効・取上げ事由、児童生徒性暴力等の類型(法第2条第3項第○号) 等 |
情報の掲載期間 | 当面少なくとも40年間 |
利用方法 | ①対象施設から文部科学省へ利用登録 ②利用登録が許可された対象施設の採用権限を有する者が、データベースを検索、閲覧 |
データベース該当者への対応 | 採用面接等を通じ経歴等のより詳細な確認を行うなど、法の基本理念にのっとり、当該者が児童生徒性暴力等を再び行わないことの高度の蓋然性が確認できるか、十分に慎重に、適切な任命又は雇用の判断を行う |
情報管理 | 個人情報保護法に基づく安全管理措置を講じる 同法違反の事案については罰則が課される |
項目 | 件数 |
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特定免許状失効者等の登録件数 | 2,698件 |
システム利用者登録件数 | 約6,500件 |
法施行後(令和4年4月1日以降)に児童生徒性暴力等を行ったことにより特定免許状失効者等となった者が再度免許状の授与を申請した場合、法第22条に基づき、授与権者による再授与審査が行われます。免許状の再授与審査に当たっては、
等が求められます。
児童生徒等に対して性暴力等に及んだ教員の厳正な処分については、これまでも、原則として懲戒免職とするよう、各教育委員会に対して指導してきたところです。その結果、令和2年9月時点で、全ての都道府県・指定都市教育委員会の懲戒処分基準において、その旨の規定が整備されました。
また、そのほかにも教員による性暴力等の防止のために必要となる取組について、例えば
などについても通知に明記し、各教育委員会に対応を求めているところです。
禁錮以上の刑に処されたり、教員が(性暴力等に限らない)犯罪や非違行為などにより懲戒免職や懲戒解雇処分を受けたりすると、教育職員免許法の規定により、その所持する教員免許状も失効又は取上げとなり、官報に公告されます。
「教育職員」の採用権者(幼稚園、幼保連携型認定こども園、小・中・高等学校、特別支援学校等の教員を任命又は雇用する者)が教育職員を採用する(臨時的任用職員・会計年度任用職員である講師の登録を含む。)に当たり、採用希望者が懲戒免職処分等を受けたことによって免許状が失効・取上げとなったかどうかを確認する手段の一つとして、官報に公告された免許状の失効・取上げ情報を検索・確認することのできるツールを、平成30年7月から文部科学省より希望する採用権者へ提供しています。
令和3年2月には検索可能な情報の期間を直近3年間から直近40年間に大幅に延長しました。また、省令(教育職員免許法施行規則)の改正により、令和3年4月以降に公告される官報については、教員免許状の失効事由である懲戒免職処分等について、その具体的な理由の主な類型(児童生徒等に対する性暴力等)が判別できるようにしました。
法においては、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置として、教育職員等や大学の教員養成課程を履修する学生に対し、児童生徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるための啓発等を行うこととされています。
これを受け、文部科学省においては、令和4年6月に、児童生徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるため、末松文部科学大臣や専門家が出演する動画を制作・公表し、教育委員会や大学などに積極的な活用を要請しました。
法においては、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置として、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する措置として、教育委員会や学校における研修等の防止措置や、定期的な調査の実施や相談体制の整備等の早期発見・対処に関する措置を行うこととされています。
このため、文部科学省では、教育委員会や学校において適切な対応が行われるよう、先進的に取組む教育委員会等のノウハウや専門的知見をまとめた取組事例集を作成・公表しました。
また、教育職員向けの研修にそのまま使えるように、(1)法の基礎知識の習得や(2)当事者意識・課題意識の醸成、(3)早期発見・初動対応の3編に分けて研修用動画についても作成・公表しました。
令和5年10月、盛山大臣によるメッセージ「子供たちを児童生徒性暴力等から守り抜くために~全国の学校関係者の皆様へ~」を公表しました。
教育職員等が、子供たちに対し、「魂の殺人」とも呼ばれる性暴力等を行うことは断じてあってはならず、言語道断です。
メッセージでは、学校設置者などに対し、改めて教育職員等に対する研修や、相談体制の整備・周知等の速やかな実施を求めるとともに、児童生徒等に対する「生命(いのち)の安全教育」に取り組むことをお願いしています。